大学入学共通テストの概要とセンター試験と共通テストの違い
では早速大学入学共通テストとセンター試験の違いについて解説していきます。実際に現代文の問題を解いてみて感じた点は以下です。
①いくつもの複合的な情報から検討したうえで選択肢を吟味する問題が増えました。
→共通テストの試行調査の問題は、いくつもの情報が与えられたうえで、情報を抽出して問題を解く必要がありました。
②センター試験の様に、評論文と小説文のようにカテゴリーがきれいに分かれておらず、実用書やエッセイなど今まで見慣れない問題が題材となって出題がなされました。
→センター試験の様に、評論文、小説文ばかりを演習するのではなく幅広い種類の文章を読む必要があります。
③選択肢が複数回答のものもありました。
→センター試験の様に、単に消去法で問題を解き進めていくだけでは解答するのが難しい問題もあり、本文中から根拠をしっかり見つけながら解いていくことが必要でした。
続いて大学入学共通テストとセンター試験の違いについてです。
①大学入学共通テスト(2018年度施行調査参考)
- 試験時間:80分
- 大問数: 5題
- 設問数: 25題
- 満点:200点
※なお、現代文は、古典漢文と合わせて試験時間は80分、満点は200点の予定です。当初実施予定の記述問題は2020年度の入試はいったん延期となり出題されない予定です。
②センター試験
- 試験時間:80分
- 大問数:4問
- 設問数:24問
- 満点:200点
※なお古文漢文現代文合わせて200点となります。
大学入学共通テスト試行問題(2017年度版)の「現代文」試験分析
では早速2017年度の現代文の解説をしていきたいと思います。
第1問
この問題は、「高等学校の生徒会部活動の規約」や「生徒会規約に関する生徒会部活動委員会の執行部会の5人の会話文」が題材となっています。問1は記述問題です。当該年度に部(今回はダンス部です。)を新設するために必要な条件と手続きを、規約にもとづいて50 字以内でまとめる問題でした。規約の中でも第3章の部の新設の部分にヒントが書かれている。これらの情報を抽出したうえで50字にまとめるとよいと思います。問2は、兼部といって、1人が複数の部に入る(所属する)ことの条件を緩和するかどうか、これまで認められてこなかった生徒の要望の内容等を規約にもとづいて検討する記述問題でした。第8章の部の運営についての件部の部分をもとに文章を説明していく必要があります。これらの情報を抽出しつつ、25時でまとめてください。問3は現在の部活の終了時間(17 時)を延長する提案に対して指定された文章の型をもとに書いていく問題です。5人の会話や与えられている規約等の情報をまとめていくと、部活動の終了時刻を延長する懸念点として、安全確保が難しいかもしれないという仮説を立てることが出来る。安全確保が難しいかもしれないというヒントは資料③にヒントが、それだけでなく5人の会話もヒントになっているのかもしれません。
これらの記述問題ですが、与えられた情報から抽出する難しさがあると感じました。
第2問
宇杉和夫「路地がまちの記憶をつなぐ」という題材やいくつかの資料が複合した問題となっていました。テーマは、日本の都市における路地の特徴と意義についてまとめた文章でした。問1は語句問題でした。Aは「機縁物語性」という意味です。「機縁」とは、デジタル大辞泉によると、「ある物事が起こったり、ある状態になったりする、きっかけ。縁。」のことを意味して、「子どものときに読んだ本が機縁となって今の仕事に就く」などの使われ方をするといわれています。また「物語性」とは研究者、新田 義彦氏によると『「主人公がいて話の筋があって最後に完結すること」が,「物語」であり,そのような性質を「物語性」と言う』と述べています。これらの言葉を分けて考えて、これらを根拠に選択肢を検討していくとよいと思います。Bは「広域空間システム」という言葉です。この言葉は「近現代道路空間計画システム」であることを押さえておきましょう。問2は、第6段落の本文中等をヒントに解いていけば解ける問題だと思います。パッケージ型と参道型の路地の違いを考えさせる問題でした。問3は、図3に示された江東区の写真をみて考えさせる問題でした。これらの答えを本文の中から拾ってくるのは難しく選択肢を吟味し、消去法で解きながら、本文を確認するというやり方で読み進めていくとよいかもしれません。問4は選択肢が6つもありそこから2つを選ぶ非常に難しい問題でした。本文全体を理解していないと解きづらい問題でした。そのため、各段落の用紙を理解しながら読んでいくとよいのかもしれません。問5は、本文では触れられていない「緊急時や災害時の対応について」考えさせる問題でした。文章を読んだうえで成り立つ意見はどれか考えさせる問題です。路地の特徴等について文章中から抽出して情報を整理しながら選択肢を吟味するとよいと思います。
参考:物語性について
第3問
光原百合「ツバメたち」(『捨てる』)からの出典でした。冒頭にオスカー・ワイルド作「幸福な王子」の概要が記載されていました。幸福な王子の話を題材にしつつ、王子のために尽くしているツバメのことが気になるツバメである「あたし」の視点から王子やツバメについて語られる物語です。ツバメが王子の願いを受けて、金箔や宝石を運んでいるのも、実は誰かのためではなく、王子の喜ぶ顔を見たかったからではないか?と、でも本当のところはわからないという「あたし」視点の物語でした。読解問題等はやや難しく平均点が低かったようでした。問1は漢字の問題なので割愛します。受験生や実際に共通テストの試行調査を解く学生にとって今回出題された漢字はできたら覚えておきたい漢字です。ぜひ辞書等をひいて覚えておきましょう。問2は設問をよみつつ、若者が風変りであることについて書かれている本文を見つけましょう。問3では登場人物の心情を問う問題でした。選択肢それぞれ関東の問題であったため非常に難しかったと思います。なぜ「わからない」と感じたのか、わからないと伝えたのか整理していくと解けると思います。問4は「幸福な王子」とその後の文章を比較した問題でした。正解となる選択肢が複数あるため非常に難しい問題でした。問5はこの文章の構成を問う問題でした。どう語られているのかとう問題でセンター試験等ではあまり見ない問題だったかもしれません。全体の構図をしっかり読み解いていきましょう。
大学入学共通テスト試行問題(2018年度版)の「現代文」試験分析
では早速2018年度の大学入学共通テストの現代文の問題について解説していきます。
第1問
鈴木光太郎の「人の心はどう進化したのか」と正高信男の「こどもはことばをからだでおぼえる」という2本の文章を用いた問題です。「人の心はどう進化したのか」という作品は、ひとはどうやってヒトになったのか、道具や言語の使用などについて記載されている。今回の出題の際には指差しについて題材にされています。では早速各問題について解説します。
問1では、文章1の傍線の「指差しが魔法のような力を発揮する」という内容について問うています。現代文で内容について問われた時、その傍線の前後関係をみて、内容を整理すると答えになるケースがあります。(現代文を解く際のコツです。)そのため、現代文を読んだ際、直前を見てみましょう。
「言葉が全く通じない国に行って、相手になにかを頼んだり尋ねたりする状況を考えてみよう。このときには、指差しが魔法のような力を発揮する。なんといっても指差しはコミュニケーションの基本なのだ。」
この文章で、指差しはコミュニケーションの基本なのだとあり、指差しすることで、コミュニケーションの基本である(コミュニケーションができる)と解釈できます。これらの言葉を使って、内容をまとめると、
「指差しに依って相手に頼んだり尋ねたりできること。」
等が答えになります。
※この際の採点基準としては、
- 30文字以内で書かれていること。
- ことばを用いない、または指差しによることが書かれていること。
- コミュニケーションがとれる、相手に注意をむけさせることが書かれている。
の3つが書かれていることが正答の条件とされていました。
問2では、人の「初期の指差しと言語習得」について、文章1と文章2の2つの文章をもとに整理し一般化しています。この問題では文章2で書かれた内容を整理して、解答するとよいでしょう。
問3では、生徒が「ヒトの指差し」について資料を探し、「話してが示したいものと同一視できないケース」があること、また「同一視できないケース」も「話し手が示したいもの」がりかいできるのか、生徒がどうまとめたと思うか書く問題です。非常に難しく、いくつかの条件が与えられているため、満点をとるのは難しかったかもしれません。
生徒が資料として持ってきたものを見ていくと、レストランのメニューを見た際に、料理を指差すと、その写真自体(メニューにある写真)ではなく、本物の料理のことであるとわかります。つまり、指差しされたものが話しての示したいものと全く一緒でない(同一視できない)ケースもあるという具体例が書かれていました。これらを利用して、
「話し手が地図上の地点を指差すことで、支持されているのは地図そのものではなく、地図が表している場所であることが聞き手には理解できる。それが理解できるのは、他者の視点にたつ能力があるからである。」
が答えになります。正答条件等が細かく決められているため、実際に共通テストの試行問題を解いた学生も、自分があっているのかどうか自己採点することが難しかったかもしれません。
第2問
続いて評論分では、著作権に関するポスター資料と著作権法の一部と著作権に関わる文章について書かれたものが出題されました。設問は漢字を選ばせる従来のセンター試験と似たような問題も出題されましたし、具体例を選ばせる問題等幅広い問題が出題されました。
第3問
本文はエッセイと詩を合わせた出題となっていました。従来のセンター試験では評論文1題、小説文1題などが定番でしたが、今回は詩とエッセイが出されていました。詩や短歌を読みながら解釈を考えたり、選択肢を吟味する力が問われています。単に語句を聞く問題にとどまらず詩の表現についてだけでなく、詩とエッセイの表現について問うような複合的な問題も出題されていました。
現代文は以上です。複数の文章やコンテンツを関連付けて理解したり、理由を説明したりする力が必要となりました。また、実用的な文章(今回は著作権についての文章が出題されました。)が出題され、受験生の生活にも関係ありそうな問題も出題されていました。
センター試験2020年の現代文の試験分析
続いてセンター試験についても合わせて解説していきます。現代文の出題は、今回も評論文1題、小説文1題でした。
第1問
「レジリエンス」という概念についての文章で、河野哲也の「境界の現象学」から出題されていました。環境の変化に動的に適応する能力として「レジリエンス」という言葉があるという問題です。聞き慣れない言葉ではあるのですが、文章を読んでいきながら、イコールとなる表現などを追っていくことで内容を捉えることができると思います。
問1は漢字の問題が出題されます。漢字自体が難しくても、言葉の意味がわかれば正答できる可能性があります。例えば、(エ)の偏ってという表現であっても、偏差値が「平均値からのずれやかたより」であることが見抜ければ、正答できるでしょう。
問2は傍線部の内容を問う問題で、レジリエンスについて理解していれば解ける問題です。レジリエンスと回復力やサステナビリティが類似している部分もあるが違う部分もあることが文章中にかかれているため、それらの構図を理解した上で問題を問いていけば良いでしょう。
問3は傍線部の内容を問う問題で、レジリエンスと脆弱性(バルネラビリティ)について記載されています。脆弱性は環境の変化にいち早く気づくためのセンサーや気づくための道具であることがわかれば、選択肢を選ぶことができるでしょう。
問4はレジリエンスという概念が福祉にどのように応用されるか問われています。それが何を指すか見抜き、「環境に柔軟に適応していく過程」と読み取れれば、解きやすいと思います。またすなわちという接続詞もあるので、レジリエンスとは、事故のニーズを充足するためにお最低限の回復力であることが理解できるでしょう。
問5は、生徒たちとの対話形式で問題が作られています。本文の内容に関する応用的な思考力や表現力が必要となる問題でした。2018年度の共通テストでも似たような表現(古典の問題ではあり、現代文で同じような出題があったわけではないのですが…。)が出されていました。空欄の前後関係を確認しながら問題を問いていけばOKです。
問6は、文章の構成を問う問題でした。
第2問
本文は原民喜の「翳」という問題でした。古い時代からの小説文で馴染みのない表現等も散見されたので解きづらかった人もいるかもしれません。戦争中に病気の妻と魚屋の若者の「死」に関する私の気持ち等が多く語られている問題です。
問1は、語句の意味を選ぶ問題でした。例年通りの出題です。
問2は、心情を把握する問題でした。登場人物や人間関係を正しく把握していれば解ける問題でした。
問3は、私が妻の心情をどのように捉えていたのか問う問題でした。妻も笑いこけている描写もあるが、それでも笑いきれないものがあるように感じたと書かれていました。また目には見えない憂鬱の翳はだんだん濃くなっていくようだとあり、その前提から私がどう推測したのか考えていければ回答できるでしょう。
問4は、魚芳(川瀬成吉)が私たちに対してどう思っているか考える問題です。遠慮がちで真面目な性格が読み取れれば正しい選択肢が選べると思います。ただし時代の状況や文章の背景を理解していないと解きづらい問題ではあったかもしれません。
問5は、本文中の手紙のやり取りから私の感情を読み取る問題です。1つずつ選択肢を吟味すれば解ける問題だと思います。
問6は、表現に関する問題でした。適当でないものを選ぶことがポイントでした。
評論文では難しい文章や概念を接続詞や文章構造から理解していく必要がありますし、小論文はストーリーを追うだけでなく登場人物同士の関係性や人物像、時代背景等も理解していく必要がありました。
こちらの記事ではさらに細かく共通テストとセンター試験の違いを紹介していますので是非参考にしてみてください。
よくあるQ&A
センター試験の過去問題は使えますか?
センター試験の過去問題も共通テスト対策にはとても有効です。
共通テストになったことで思考力を問うような問題が増えることが試行調査からも明らかになっています。しかし思考力を問う問題では前提としてセンター試験に出ているような問題の知識がなければいけません。
そのため、センター試験を演習として利用するのはとても有効な対策方法といえます。
しかし、センター試験過去問問題の優先順位はそれほど高くないことには注意しましょう。
共通テスト対策のために使える問題として、センター試験の過去問題・共通テストの試行調査・市販の予想問題集の3つが挙げられます。
理科・社会は比較的傾向の変化は少ないですが、まずは試行調査の内容をしっかりと理解するようにしてください。
その次におすすめなのが市販の予想問題集です。
傾向が変わることを考えるとセンター試験の過去問題よりもこちらのほうがおすすめといえます。
そして最後にセンター試験の過去問題ををしましょう。そのため優先順位は
- 施行調査
- 市販の予想問題集
- センター試験過去問
になります。
共通テストの予想問題集は使ったほうが良いですか?
とても有効です。しかし、予想問題集として発売されていても内容は異なることがあるので、注意するようにしてください。
具体的には
センター試験の過去問題を扱っている場合
試行調査を扱っている場合
オリジナルの予想問題を扱っている場合
の3つがあります。
「予想問題」という言葉だけを見て買うのではなく、内容もきちんと確認するようにしましょう。
前の質問で述べたように、この3つの優先順位は
- 施行調査
- 市販の予想問題集
- センター試験過去問
となりますので、自分に必要なものを確認してから使うようにしましょう。
予想問題集や過去問題に取り組むのはいつ頃がいいですか?
早ければ早いほど良いです。
しかし基礎的な知識を十分に身につけられていない段階では問題を解いても意味がありません。
こちらの記事ではゼロから早慶まで対応するための参考書のルートを紹介しています。
各参考書がどのレベルに対応するものかなのかや、終了後に取り組んでほしい参考書なども紹介されています。
こちらの記事を参考にしながら、日東駒専・大東亜帝国レベルの参考書までやってから予想問題集や過去問題に取り組むのがおすすめです。
【生物】共通テスト対策におすすめの参考書一覧
教学社 共通テスト問題研究 国語
河合塾 共通テスト攻略レビュー 国語
河合塾 共通テスト総合問題集 国語
Z会 共通テスト実践模試 国語
Z会 はじめての共通テスト対策 国語
駿台 共通テスト問題集 センター過去問編 国語
KADOKAWA 大学入学共通テスト予想問題集 現代文
教学社 大学入学共通テストスマート対策 現代文
各参考書の特徴を紹介!
上では共通テストで使える参考書一覧を記載しましたが、出版社によって参考書には違いがあります。
そこでここでは各参考書ごとの特徴をご紹介します!
科目ごとに収録内容には多少のばらつきがあります。そのためここではおおまかな傾向を挙げますが、実際に購入する際には自分に必要な参考書の中身を確認するようにしてください。
「数学社 共通テスト問題研究」の特徴
試行問題
2回分
センター過去問
本試験8年分(2013年~2020年)
追試験2年分(2018年・2019年)
オリジナル問題
2回分
「河合塾 大学入学共通テスト攻略レビュー」の特徴
試行問題
1回分(2018年実施分)
センター過去問
本試験6年分(2015~2020年)
追試験3年分(2017~2019年)
オリジナル問題
なし
「河合塾 共通テスト総合問題集」の特徴
試行問題
1回分(2018年実施分)
センター過去問
なし
オリジナル問題
5回分
「Z会 共通テスト実践模試」の特徴
試行問題
1回分
センター過去問
なし
オリジナル問題
収録あり
「Z会 はじめての共通テスト対策」の特徴
試行問題
2回分
センター過去問
なし
オリジナル問題
収録あり
「駿台 共通テスト問題集 センター過去問編」の特徴
試行問題
2回分
センター過去問
本試験5年(2016~2020)
追試験3年(2017~2019)
オリジナル問題
なし
「教学社 大学入学共通テストスマート対策」の特徴
試行問題
1回分
センター過去問
収録あり
オリジナル問題
収録あり
「駿台 共通テスト問題集 マーク式実践問題編」の特徴
試行問題
2回分
センター過去問
なし
オリジナル問題
収録あり
他科目の共通テスト対策情報の紹介
アクシブblog予備校では各科目の共通テスト分析記事を作成しています。
ぜひ参考にしてみてください。
アクシブアカデミーについて
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